第8回WI2研究会報告

2016年6月4日(土)・5日(日)に,鹿児島県市町村自治会館にて第8回WI2研究会を開催致しました.一般発表は,ロング発表・ショート発表合わせて16件の発表がありました.

SNS・ソーシャルメディア分析,情報推薦,インタラクション支援,テキスト分析,クラウドコンピューティング,IoTなどでした.また,招待講演では,林良平先生(鹿児島高専)より「痕跡と社会的シグニファイア」,土方嘉徳委員長(大阪大学)より「ソーシャルメディアにおける心理学」についてのご講演いただきました.参加者数は36人でした.

→プログラム →特別講演 →表彰 →副座長報告 →学生参加報告 →運営委員会

日時・会場

日時: 2016年6月4日(土)13:00~17:55
2016年6月5日(日)10:00~16:00
会場: 鹿児島県市町村自治会館
(〒890-0064 鹿児島県鹿児島市鴨池新町7-4)
http://j-kaikan.net/

アルバム


一般発表の様子です

一般発表の様子です

一般発表の様子です

一般発表の様子です

質疑応答の様子です

会場入り口の様子です

林 良平氏の招待講演です

土方嘉徳氏の招待講演です

優秀研究賞の表彰です

萌芽研究賞の表彰です

学生奨励賞の表彰です

土方委員長が委員長を退任されました

プログラム

■6月4日(土) (受付 12:30~)
13:00-13:15 開会の挨拶
13:15-15:15 セッション1:SNS,ソーシャルメディア
座長:高間康史(首都大学東京) 副座長:河合由起子(京都産業大学)
(ロング発表)
1. 叫喚表現化によるツイート印象の変化の分析
 熊本忠彦(千葉工業大学)
2. ソーシャルログインはユーザのサービス利用を継続させるか?
 ~PinterestにおけるFacebookログインを調査して~
 土方嘉徳,安藤 諒,酒田信親(大阪大学)
(ショート発表)
3. Twitterの本文要素を用いたイベント視聴動向の推定☆
 田中千尋, 若林啓(筑波大学)
4. バイラルメディアを利用するユーザに関する基礎調査☆
 大森義史,土方嘉徳,吉田翔吾郎,酒田信親(大阪大学)
5. 地理的・時間的観点を考慮したジオタグ付きツイートの偏在性及び遍在性の可視化☆
 遠山由自(静岡大学),廣田雅春(大分工業高等専門学校),
 石川博(首都大学東京),横山昌平(静岡大学)

15:15-15:30 休憩
15:30-16:15 招待講演1
司会:杉原太郎(岡山大学)
「痕跡と社会的シグニファイア」
  林 良平(鹿児島高専)
16:15-16:30 休憩
16:30-17:40 セッション2:情報推薦
座長:土方嘉徳(大阪大学) 副座長:大塚真吾(神奈川工科大学)
(ロング発表)
6. 価値観モデルベース協調フィルタリングのハイブリッド推薦システムへの拡張
 三澤遼理,高間康史(首都大学東京)
(ショート発表)
7. 図書館における資料探索行動に着目したセレンディピティのある情報推薦システムの提案☆
 鈴木啓史, 松村敦, 宇陀則彦(筑波大学)
8. 住居選択支援を目的とした不動産物件画像からの深層学習による情報抽出の試み
 石田陽太,清田陽司(株式会社ネクスト)
17:40-17:55 セッション3:技術報告
座長:土方嘉徳(大阪大学)
9 データマイニングを活用したリクルートグループでのランキングアルゴリズム改善事例
 大杉直也(株式会社リクルートテクノロジーズ)
19:00-21:00 懇親会
■6/5(日) (9:30~受付)
10:00-11:30 セッション3:インタラクション支援
座長:熊本忠彦(千葉工業大学) 副座長:林亜紀(NTT)
(ロング発表)
9. 人狼ゲームにおいてエージェントの存在通知の程度が看破に与える影響
 高田和磨,杉原太郎,五福明夫(岡山大学)
(ショート発表)
10. 経路編集を用いた乗換案内のための経路比較インタフェースの提案☆
 清水 祐弥(工学院大学), 小林 亜樹(工学院大学)
11. ユーザ特性を考慮したリアルタイムリンク生成に基づくコミュニケーション支援の提案☆
 林利憲(関西学院大学),王元元(山口大学),河合由起子(京都産業大学),
 角谷和俊(関西学院大学)
12. 大量の効果音に対する効率的な検索に向けた一検討☆
 岡本香帆里,松下光範(関西大学),山西良典,山下洋一(立命館大学)
11:30-13:00 昼休憩
13:00-13:50 セッション4:テキスト分析
座長:大向一輝(国立情報学研究所) 副座長:北山大輔(工学院大学)
(ロング発表)
13. 文書の多様性指標の提案とオンラインニュース記事の分析
 須藤明人、鷲田祐一、本田秀仁、和嶋雄一郎、粟田恵吾、
 植田一博(東京大学、一橋大学、大阪大学、日本総合研究所)
(ショート発表)
14. 機関リポジトリから収集した学術論文のテキスト解析に関する一検討
 岡本一志(電気通信大学)
13:50-14:00 休憩
14:00-14:40 セッション5:クラウドコンピューティング,IoT
座長:庄司裕子(中央大学) 副座長:松下光範(関西大学)
(ショート発表)
15. セキュアマルチパーティ秘密計算法によるベクトル量子化の実現
 宮島洋文(長崎大学),重井徳貴(鹿児島大学),宮島廣美(鹿児島大学),
 宮西洋太郎(アイエスイーエム),北上眞二(早稲田大学),白鳥則郎(早稲田大学)
16. IoTを用いたみかん農家支援☆
 熊坂 瞳, 村瀬 哲平, 大塚 真吾(神奈川工科大学)
14:40-14:50 休憩
14:50-15:35 招待講演2
司会:松下 光範 (関西大学)
「ソーシャルメディアにおける心理学」
 土方嘉徳(大阪大学)
15:50-16:00 表彰式・クロージング

招待講演1:「痕跡と社会的シグニファイア」

司会: 杉原太郎(岡山大学)
講演者: 林 良平(鹿児島高専)
講演概要: 人は状況にある情報を瞬時に読み取り,意思決定の材料にしている.けものみちや廊下の摩耗,手垢,着色など表面に残された痕跡は,過去にその場所で繰り返し行われた行動を読み取ることができる.人影のないホーム(電車は行ってしまった),傘を差す人々(雨が降っている)や,長袖を着る人の割合(外は肌寒い)など周囲の状態は,社会的シグニファイアとして情報を伝えている.そこで,ここでは痕跡と社会的シグニファイアの例を多数挙げながら,人の意思決定のメカニズムを考察してみたい.

招待講演2:「ソーシャルメディアにおける心理学」

司会: 松下 光範(関西大学)
講演者: 土方嘉徳(大阪大学)
講演概要: TwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアが人気を集めている.これらのメディアではユーザに適したコンテンツや商品を提示する推薦機能(レコメンド機能)が提供されていることが多い.従来の推薦システムでは,ユーザのソーシャルメディア上での行動に基づいて推薦が行われているが,その行動にはユーザの内面に存在する心理が影響を与えていると考えられる.また,これまでの推薦システムの評価においては,ユーザに尋ねた満足度が用いられることが多かったが,その値にも心理が影響を与えていると思われる.この講演では,ユーザの心理とソーシャルメディア上での行動の関係について,最新の調査結果と共に説明を行う.

表彰

WI2研究会では,出席したWI2委員全員により,全ての発表の聴講と評価を行っております.今回,各賞を受賞された研究は以下のようになります.

優秀研究賞
ソーシャルログインはユーザのサービス利用を継続させるか?
 ~PinterestにおけるFacebookログインを調査して~
 土方嘉徳,安藤 諒,酒田信親(大阪大学)

萌芽研究賞
人狼ゲームにおいてエージェントの存在通知の程度が看破に与える影響
 高田和磨,杉原太郎,五福明夫(岡山大学)

学生奨励賞
大量の効果音に対する効率的な検索に向けた一検討
 岡本香帆里,松下光範(関西大学),山西良典,山下洋一(立命館大学)

副座長報告

セッション1:SNS,ソーシャルメディア
副座長:河合由起子(京都産業大学)
報告内容:セッション1のSNSとソーシャルメディアでは、2件のロング発表と3件のショート発表が行われた。
1件目のロング発表では、「やったああああ」といった叫喚表現されるツイートに対する読み手の印象に関する定性的評価に対する分析結果に関する発表であった。主にアンケート対象となったツイートデータに関する質問が多かった。AとBのデータセットの均一性に関しては、内容に関する印象を均等にする必要があり均一性を検証することは現時点では困難であるということであった。また、特定ユーザに対する評価は現時点では多くのユーザを対象にするのは現実的に難しいということであった。また、伸ばす長さに対する評価は今回は行っていないが既存研究の紹介があった。読み手の感じ方を評価しているが、書き手の感じ方の調査も今後期待したいというコメントもあった。
2件目のロング発表では、ソーシャルログインユーザのサービス利用の継続性の検証を目的としてPinterestにおけるFacebookログインの調査分析を行っていた。Pintersest(画像SNS)は女性ユーザが多いがアクティブ性は高くないという結果に対する質問が多く、ファッションや風景など美しい画像が多いため女性ユーザ数が多いが、男性ユーザと比較すると男性は異性を多くフォローするためアクティブ性が女性ユーザより高くなったのではないかという回答であった。また、共通の友人がいるとアクティブ性が高まることが明らかとなったので、推薦に応用することは有効ではないかというコメントもあった。
3件目のショート発表では、Twitterの内容分析によりTV番組の視聴率との関連性から視聴動向を推定する手法を提案している。回帰式の独立性に関して質問があったが、ユーザ数の増加とツイート数の増加は必ずしも比例しておらず問題ないが、分散分析の検討余地があったということであった。また、放送時間だけを対象とした理由として、実際にその番組を見ている確率を高めるために行ったということであった。難しいかもしれないが、録画への対応も期待するというコメントもあった。
4件目のショート発表では、grape(日本)、BuzzFeed(米国)のバイラルメディアユーザに関する基礎調査に関する報告があった。アメリカではバイラルメディアユーザの方がソーシャルメディアの熟練度が高いう日本と逆の結果に関する質問があり、うまく探せない人が利用するのが日本で、伝達することを目的としているのがアメリカではないかという議論がなされた。また、熟練度の定義に関する質問では、著者独自の定義として、長く使っており独自の機能を使えているユーザとしており、専門性との違いを定義してるという回答であった。リテラシや元情報を確認するというプロセスも考慮すると良いのではというコメントもあった。
5件目のショート発表では、ジオタグ付きツイートの時間と場所に基づいた地理的分布の可視化をデモを交えて報告があった。時間の関係上、質問は1つだけであったが、共起名詞の対象に関する質問に対して、他の県に1つでもあれば対象としているということであった。

セッション2:情報推薦
副座長: 大塚真吾(神奈川工科大学)
報告内容:セッション3(ロング発表1件,ショート発表2件)では、情報推薦や画像抽出に関する発表があった。
1つ目の発表では、まず、価値観モデルとユーザモデルの両者を利用した協調フィルタリング手法の提案があり、旅行データやグルメデータなどの実データを用いた実験結果の説明があった。質疑では、提案手法で使われている価値観に関する議論や価値観モデルを導入した理由などに関する議論、コールドスタート問題に関する議論があった。
2つ目の発表では、図書館においてセレンディピティを考慮した資料探索システムの提案があり、書籍のジャンルを利用した手法の説明と実験結果が示された。質疑では、比較対象がAmazonとした理由などに関する議論があった。また、提案手法は推薦と検索の中間のシステムであり、提案システムの評価が難しいのではというコメントなどがあった。
3つ目の発表では、深層学習を用いてキッチンに関連する物件画像データから、種類や大きさなどを分類する手法の提案と実験結果の説明があった。質疑では、提案手法の精度に関する議論があった。また、評価実験の中でキッチンの広さを判定するタスクは人間が行っても難しいので、前処理を行ってから深層学習を行った方が精度が上がるのではないかというコメントがあった。最後に、提案手法の実用化に関する議論があった。

セッション3:インタラクション支援
副座長:林亜紀(NTT)
報告内容:1件目のロング発表は、人狼ゲームにおいてエージェントの存在通知の程度が看破に与える影響に関する内容であった。エージェントの存在が明示的に通知されるほど、看破の可能性が高まること、プレイヤーに比べてエージェントは同調傾向が低いことが看破の要因であることの考察があった。会場からは、エージェントの振る舞いイメージがプレーヤーに形成されるかによって結果が左右されるのではとの指摘があった。また、プレーヤーの目的が勝敗なのか、エージェントの看破なのかの切り
分けに関する議論があった。発表者からは、今回の検討ではプレーヤーの目的があくまで勝敗となっていた旨、勝敗に影響させるようにエージェントを作ってはいなかった旨が回答された。
2件目のショート発表では、乗換案内のための経路比較・編集インタフェースが提案された。乗車時間や徒歩移動を示した2次元平面図と、提示結果の一部を残して途中から経路を編集できる機能が特徴である。会場からは提案手法による経路編集と既存サービスによる経由駅指定の差分がないのではないか、適用先を乗換案内に限定し過ぎなのではないか、デフォルメ表示があった方がよいのではないか、一本前・一本後検索などを含めた探索を考えたインタフェースが必要なのではないかといったコメントがあった。
3件目のショート発表では、SNSの会話において、情報受信者に馴染みのない非特徴語に対する情報リンクを自動生成することによる知識支援と、特定の場所によく行く類似ユーザを提示することによる発話喚起支援が提案された。会場からは、なぜ類似度が高い人を推薦するのかという指摘があり、あくまでコミュニケーション促進が目的で、ユーザの推薦が目的ではないとの回答があった。また、自動情報付与ではなく、発信者や受信者のアクションをトリガーとした方がよいのではないか、行動の意図を考慮する必要があるのではないかとの意見があった。
4件目のショート発表では、効果音選択の探索時間削減と検索結果の多様性向上のために、オノマトペと音響特徴、テキスト文脈の3つを類似度算出指標として用いたインタフェースが提案された。また、オノマトペの自動付与に関する検討が報告された。会場からは、音響特徴から自動付与されたオノマトペと、上記インタフェースにおける音響特徴自体の類似計算結果の差分に関する質問が出た。前者は音声・音素を考慮し、後者は音の高低や大小を考慮するため、差分が生まれる考えであるとの回答があった。また、提示する候補が多すぎる際に、好みを反映するなどの情報選別が必要になるのではないかとの指摘があり、選択履歴やお気に入りの記録を考えている旨が回答された。

セッション4:テキスト分析
副座長: 北山大輔(工学院大学)
報告内容:セッション4では1件のロング発表と,1件のショート発表があった.
1件目のロング発表では,文章の多様性に関する定量化指標の提案が発表された.生態学で行なわれている多様性評価の指標を参考にBag-of-wordsの各単語を各個体とみなしてHill Numberによって多様性を評価した.質疑では,従来手法のトピックモデルのトピック数を単語数にまで広げた特殊解が出ているのではないか?という指摘や,多様性には階層関係があり,今回のモデルでは多様性が表現できていないのではないかという質問があった.また,例えば「炎上が起これば多様性が減少する」など,多様性指標の有用性を評価するような実験ができると納得性が上がるというコメントがあった.
2件目のショート発表では,機関リポジトリに対するテキストマイニングを行うための方法の紹介と,それによって明らかになった課題に関しての報告があった.特に,紙の論文をスキャンしてPDFにした場合にOCRの影響で単語が細切れになるケースに問題が見られた.また,一般語および専門語に対してword2vecを用いて近接語を抽出した結果が報告され,概ねうまくいっているように見える結果であった.質疑では,機関リポジトリ特有の問題として,分野が横断すると特に略語など同一の語句に対しての精度が悪くなるのではないかという指摘や,OCRによる細切れといったノイジーな環境だと,形態素解析のミスの影響がどのくらいテキストマイニングの精度に影響するのかといった質問,学術分野における新語への対応に関する質問があった.

セッション5:クラウドコンピューティング,IoT
副座長:松下光範(関西大学)
報告内容:1件目の発表(ショート)は、秘匿データを分散処理する方式であるセキュアマルチパーティ秘密計算法を対象として、データを分散させたままデータマイニングのような複雑な計算処理を行う方法についての発表であった。本発表ではk-means 法とニューラルガス法を試みた結果、従来の集中管理方式と遜色のない精度で結果が得られることが確認されたという説明がなされた。質疑では、分割数や計算速度、分割数の理論的限界値の有無など提案方式の特性に関する質疑が行われた。
2件目の発表(ショート)は、IoTを用いたみかん農家支援に関する発表であった。零細で高齢者が多い小規模農園を支援するために、安価で頑健な機器を開発することが研究の主眼にあるとのことであった。発表では、島根県隠岐島の海士町で始まったミカン栽培事業を対象として、ArduinoやRaspberry Pi を用いた風速・風向・雨量計測についての実施結果についての報告がなされた。質疑では、現状でどのような知識やノウハウが獲得できたかについて尋ねられたが、現在はまだ収穫までいっておらず準備段階であり、今後従事者からのノウハウ取得も含めたデータ収集へと展開していきたいという回答があった。また、聴衆からはオランダのトマト水耕栽培など、参考事例についての示唆があった。

運営委員会

実行統括担当:杉原 太郎 (岡山大学)
プログラム担当:庄司裕子(中央大学)
ローカル担当:松下 光範(関西大学)

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