第19回WI2研究会報告
2023年12月16日(土)・17日(日)に,オンラインと現地のハイブリットで第19回WI2研究会を開催致しました.一般発表は,ロング発表・ショート発表,技術報告合わせて21件の発表がありました.
質問応答,データ構造,情報推薦,CGM/SNS分析,情報抽出に関するセッションがありました.
日時・会場
日時: | 2023年12月16日(土)10:00~19:00 2023年12月17日(日)9:30-17:05 |
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会場: | 大阪公立大学 杉本キャンパス 学術情報総合センター |
アルバム
プログラム
■12月16日(土) (10:00-受付) | |
10:10-10:25 | オープニング |
10:25-11:45 | セッション1:大規模言語モデル・生成AI応用(*発表はすべてオンライン) 座長:高間 康史(東京都立大),副座長:北山 大輔(工学院大学) ショート発表) 1. Assembly Elemental Work Analysis Using Worker Classification by Motion Capture and Machine Learning☆ Ryuto Kawane(The University of Electro-Communications),Koki Karube(The University of Electro-Communications),Masao Sugi(The University of Electro-Communications),Tomohiro Nakada(Bunkyo Gakuin University),Tetsuo Yamada(The University of Electro-Communications) 2. 大規模言語モデルを用いたレビュー文からの価値観モデル構築に関する予備的検討☆ 板井 孝樹(東京都立大学),柴田 祐樹(東京都立大学),高間 康史(東京都立大学) 3. 音楽クリップのサムネイル画像から音楽情報以外のアスペクト情報は抽出できるのか?☆ 元満 丈寛(北海道大学),林 克彦(北海道大学),坂井 優介(奈良先端科学技術大学院大学),上垣外 英剛(奈良先端科学技術大学院大学) 4. 疑似ニュース生成による固有表現抽出タスクのデータ拡張 田村 光太郎(ユーザベース株式会社) |
11:45-13:30 | 昼休憩 |
13:30-15:20 | セッション2: SNS・機械学習 座長:吉田 光男(筑波大学),副座長:西原 陽子(立命館大学) (ロング発表) 5. 相互フォロー関係に基づくユーザのカテゴリ分類☆ 大下 颯斗(豊橋技術科学大学大学院),廣中 詩織(豊橋技術科学大学大学院),梅村 恭司(豊橋技術科学大学大学院) 6. Contrastive Learningに基づくノード列の埋め込み☆ 川崎 優輝(東京工科大学),伏見 卓恭(東京工科大学) 7. 大規模マルチラベル学習に対する 単純かつ強力な閉形式解モデル☆ 大西 雄真(北海道大学),林 克彦(北海道大学) (ショート発表) 8. 複数コミュニケーション密度の対称性に基づくレイヤーモチーフを用いたTwitterデータの分析☆ 宮崎 拓海(東京工科大学),伏見 卓恭(東京工科大学),鳥海 不二夫(東京大学) |
15:20-15:40 | 休憩 |
15:40-17:20 | セッション3: 感性情報処理 座長:大塚 真吾(神奈川工科大学),副座長:濱崎 雅弘(産業技術総合研究所) (ロング発表) 9. 意味的類似性と単語親密度に基づく意外性と納得感を考慮したなぞかけの生成☆ 光畑 陽登(筑波大学),関 洋平(筑波大学),柏野 和佳子(国立国語研究所) 10. 珍妙で面白い記事を集めたWikipedia項目の分析 ー 編集者情報および大規模言語モデルを利用して ー☆ 多田 智貴(北海道大学),林 克彦(北海道大学),上垣外 英剛(奈良先端科学技術大学院大学) (ショート発表) 11. 使いにくいインタフェースほど使われにくいか☆ 中野 卓代(高知工科大学),林 良平(高知工科大学) 12. 専門用語に着目した初学者向け学術論文閲覧支援の検討☆ 高橋 春成(岡山大学),金澤 輝一(国立情報学研究所),上野 史(岡山大学),太田 学(岡山大学) |
17:40-19:40 | 懇親会 野のはなハウス |
9:30- | 受付開始 |
10:20-11:00 | セッション4: 社会課題解決(発表はすべてオンライン) 座長:杉原 太郎(東京工業大学) (ショート発表) 13. SNS上で投稿される多様な病気症状の事実性解析☆ 安藤樹(香川大学),安藤一秋(香川大学) 14. ランダムフォレストを用いた都道府県のリサイクル率に影響を与える要因についての一考察 伊集院 大将(東京理科大学) |
11:00-11:20 | 休憩 |
11:20-11:50 | 技術報告セッション – 株式会社LIFULL |
11:50-13:00 | 休憩 |
13:00-14:40 | セッション5: テキスト処理 座長:大向 一輝(東京大学),副座長:北山 大輔(工学院大学) (ロング発表) 15. レシピ検索のための味特徴ベクトルの作成とその評価☆ 古田島 侑希(広島大学大学院),亀井 清華(広島大学大学院),泉 朋子(立命館大学),森本 康彦(広島大学大学院) 16. 映画推薦におけるトーンを考慮した説明の個人化 大社 綾乃(豊田中央研究所),小出 智士(豊田中央研究所),大滝 啓介(豊田中央研究所),馬場 雪乃(東京大学) (ショート発表) 17. ホットペッパービューティーデータからの不満情報抽出と解消スタイリストのレコメンド☆ 金光 駿弥(東京工科大学),櫻井 凜(東京工科大学),伏見 卓恭(東京工科大学) 18. 転移学習を利用した多クラス分類タスクに基づく適切な商品説明文の抽出☆ 黄川田 拓実(東京工科大学),櫻井 凜(東京工科大学),伏見 卓恭(東京工科大学) |
14:40-15:00 | 休憩 |
15:00-16:30 | セッション6: 自然言語処理 座長:山本 岳洋(兵庫県立大学),副座長:松村 敦(筑波大学) (ロング発表) 19. モーラを考慮した強化学習による歌詞翻訳☆ 櫻井 凜(東京工科大学),伏見 卓恭(東京工科大学) 20. 英文前置詞の空所補充問題を用いたBERTとその後継モデルの比較☆ 松下 颯一郎(岡山大学),上野 史(岡山大学),太田 学(岡山大学) 21. RoBERTaとELECTRAを利用した英文前置詞誤りの検出と修正の一手法☆ 中谷 聡(岡山大学),上野 史(岡山大学),太田 学(岡山大学) |
16:30-16:50 | 休憩 |
16:50-17:05 | 表彰式・クロージング |
表彰
WI2研究会では,出席したWI2委員全員により,全ての発表の聴講と評価を行っております.今回,各賞を受賞された研究は以下のとおりです.
優秀研究賞
モーラを考慮した強化学習による歌詞翻訳
東京工科大学 櫻井 凜 殿
東京工科大学 伏見 卓恭 殿
RoBERTaとELECTRAを利用した英文前置詞誤りの検出と修正の一手法
岡山大学 中谷 聡 殿
岡山大学 上野 史 殿
岡山大学 太田 学 殿
萌芽研究賞(1件)
映画推薦におけるトーンを考慮した説明の個人化
豊田中央研究所 大社 綾乃 殿
豊田中央研究所 小出 智士 殿
豊田中央研究所 大滝 啓介 殿
東京大学 馬場 雪乃 殿
奨励賞(計2件)
英文前置詞の空所補充問題を用いたBERTとその後継モデルの比較
岡山大学 松下 颯一郎 殿
岡山大学 上野 史 殿
岡山大学 太田 学 殿
大規模マルチラベル学習に対する単純かつ強力な閉形式解モデル
北海道大学 大西 雄真 殿
北海道大学 林 克彦 殿
副座長報告
セッション1:大規模言語モデル・生成AI応用(*発表はすべてオンライン)
副座長:北山 大輔(工学院大学)セッション1では4件のショート発表があった.
1件目はAssembly Elemental Work Analysis Using Worker Classification by Motion Capture and Machine Learningというタイトルで,作業分析のために要素作業を分析するための手法についての内容であった.ここでは,ナット締め作業を対象として,締める動作と戻す動作を要素作業として定義し,それらを分類するための機械学習モデルを作成した.それを用いて熟練者と未経験者の分類を行ったところ,熟練者と未経験者の分類ができ,要素作業単位でも熟練度によって動作が異なることが示唆された.質疑では,「要素作業の定義について締める,戻す以外の動作についても考えているのか」という質問に対して,「初期段階なので2動作で行っているが,今後は動作を拡張していく」旨の回答がされた.今後扱う動作について,「クラスタリングして熟練者にラベルを付けてもらうのはどうか」とコメントがあった.他に「実験結果から未経験者でもいろいろなタイプがいる.より早く熟練度が上がりそうとか予想ができるものなのか」と質問があり,「実験結果は速度だけを示しているが,熟練度としては成果物の質を見る必要がある.今後は成果物の質についても分析を行うことで,そういったタイプの分析につなげる」旨の回答がされた.
2件目は大規模言語モデルを用いたレビュー文からの価値観モデル構築に関する予備的検討というタイトルの発表であった.大規模言語モデルを使って属性別の極性評価を,zero-shot,few-shot,chain-of-thought(cot)のプロンプトで比較を行った結果について報告があった.レビュー文にすべての評価属性の言及があるわけではないため,データセットの評価とは一致しにくい結果であったが,レビューから人手で各属性の極性評価を行った結果と比較すると,ある程度の一致が見られることが報告された.質疑では「この手法はどのような需要があると考えているのか」という質問に対し,「ほとんどのレビューサイトでは,総合評価しかなく,属性別評価を明示的に付けてあるものは少なく,暗黙的な評価値を取り出せることに需要があると考えている.」と回答された.他に「cotがfew-shotに負ける場合があることの理由は」という質問に対して,「データセット評価の時に,few-shotとして与えられた回答例によってレビューの言及外のことも扱えるようになった可能性があると考えている」と回答された.
3件目は音楽クリップのサムネイル画像から音楽情報以外のアスペクト情報は抽出できるのか?というタイトルの発表であった.これは,聞きたいシチュエーション,時期,聞いたときの感情など,楽曲の非音楽的アスペクトをあつかえることで,音楽推薦の幅をを広げることを目的とした研究で,人間が与えたキャプションのデータセットと比較して,提案手法で聞きたいシチュエーション,時間・季節,感情の面でよい結果が得られることが報告された.質疑では,「Youtubeのサムネイルの作り方にパターンがあると思うが,今回はどういうものをつかったのか」という質問に対して,「いろんなCDジャケットや印象に近いものなどパターンを網羅するような選び方をした.」と回答された.また,他に「プレイリストのタイトル(○○な時に聞きたいプレイリスト)とかがアスペクトとして使えるのでは」というコメントがなされた.
4件目は,疑似ニュース生成による固有表現抽出タスクのデータ拡張というタイトルの発表で,ニューステキストの系列ラベリング付きデータを生成AIで作ることで学習データの自動生成がどの程度できるのかを明らかにするものであった.疑似データだけでは劇的な改善は見られないが,疑似データを元データに混ぜることで元データだけよりは精度の向上が見られることが報告された.質疑では,「埋め込んだ箇所に関してラベルをつけているが,たまたま生成文に企業名が含まれるなどの場合には,どうしているのか」という質問に対し,「企業とか商品を混ぜるなど複雑にすると生成が困難になる傾向がある.完全に新規で作らずにmixupとか既存データを混ぜ込む方がいいと考えている」という旨の回答があった.
セッション2: SNS・機械学習
副座長:西原 陽子(立命館大学)5. 相互フォロー関係に基づくユーザのカテゴリ分類☆
大下 颯斗(豊橋技術科学大学大学院), 廣中 詩織(豊橋技術科学大学大学院), 梅村 恭司(豊橋技術科学大学大学院)
Twitterにおけるフォロー行動の分析はマーケティングや情報拡散の分析において重要である.先行研究で提案されたフォロー比では困難なユーザ分類を行うために,相互フォロイー率,相互フォロワー率を用いたユーザ分類を提案した.相互フォロイー率と相互フォロワー率からユーザを4つのカテゴリに分類し,それぞれの投稿内容も分析する.分析を行うために,Twitter APIを使用して分析するデータを得た.分析の結果,設定された4つのユーザカテゴリと事前に想定したユーザ特徴が概ね一致することが確認された.カテゴリごとのフォロー行動の傾向や意図,投稿に含まれる特徴語の分析結果も示された.質疑では,分析における閾値の決め方や各カテゴリのユーザのツイート数を考慮したときの分析結果はどのようになるかなどが質問された.
6. Contrastive Learningに基づくノード列の埋め込み☆
川崎 優輝(東京工科大学), 伏見 卓恭(東京工科大学)
本研究では,ノード列をベクトル空間に埋め込むembedding手法を提案する.提案手法は,自己教師あり学習の1つであるContrastive learning(対照学習)のSimCLRを用いる.提案手法では,ノード列が与えられると始点,中継点,終点を固定し,ランダムウォークに基づきノード列をデータ拡張することで,類似ノード列を生成する.ノード列をencoderに入力し,ベクトルを獲得,非線形に射影し,同一の始点,中継点,終点から生成されたノード列のembeddingベクトルの類似度が高くなるようにパラメータを調整する.評価実験では複数の比較手法と提案手法の比較を行い,提案手法によるノード列の表現学習が有効であることを確認した.質疑では,比較手法の詳細の確認やノード列の類似度についての質問がなされた.
7. 大規模マルチラベル学習に対する 単純かつ強力な閉形式解モデル☆
大西 雄真(岡山大学), 林 克彦(北海道大学)
大規模マルチラベル学習とは,数千から数十万のラベル集合から各データに対して複数のラベルを付与するタスクである.従来手法は膨大なハイパーパラメータで構成されており,再現性の観点から問題が残されている.また,低頻度ラベルの予測性能にも課題が残されている.本研究では再現性が高く,実装が容易な大規模マルチラベル分類の手法をする.提案手法はリッジ回帰(閉形式解を持ち,単一パラメータで構成)を用いる.評価実験において複数の比較手法との比較を行い,単純な実装にも関わらず従来手法に匹敵する性能を達成することを確認した.また,低頻度ラベルの予測性能が向上することも確認した.質疑では,低頻度ラベルが抱える2つの問題(十分な特徴を獲得できない,推薦の時に出てこない)があるが,どちらを解決しようとしたのかや,比較手法の評価でラベルの水増しが行われたかについての質問がなされた.
(ショート発表)
8. 複数コミュニケーション密度の対称性に基づくレイヤーモチーフを用いたTwitterデータの分析☆
宮崎 拓海(東京工科大学), 伏見 卓恭(東京工科大学), 鳥海 不二夫(東京大学)
SNSでの行動意図や目的の違いによりコミュニケーションの取り方や密度,対称性に違いが出る.本研究では,Twitterにおけるリツイート,リプライ,メンションの3種類のコミュニケーションに着目し,レイヤーモチーフと呼ぶ新たなグラフ分析手法を提案する.提案手法は,3種類のコミュニケーションの単位時間あたりの頻度を用いて,その対称性からユーザペアを分析する.2つのデータセット(Higgs Twitter DatasetとTOHOKUデータセット)を用いて評価実験を行った.実験の結果,提案手法によりユーザごとのSNSの使い方や異なるグラフで共通して存在するモチーフ,しないモチーフが確認された.質疑では,グラフ内のモチーフの分布からインフルエンサーノードをどう決めたのかや,検証に使われたデータがどのような特徴を持つものかについての質問がなされた.
セッション3: 感性情報処理
副座長:濱崎 雅弘(産業技術総合研究所)セッション3ではロング発表2件とショート発表2件があった。
1件目のロング発表は、意外性と納得感を考慮したなぞかけの生成についての研究であった。本研究では、意外性と納得感を持つなぞかけ生成を目指し、意外性を得るためにはどのような言語的特徴量が関係しているかを調べ、その結果を踏まえて意外性を高めるために意味的類似性が低い単語の選択と、納得感を得るために親密度の低い単語を排除する手法を提案している。実際に生成されたなぞかけを元に考察した結果、意外性と納得感だけでは不十分だという見解を述べていた。質疑では、収集した「親密度」に関する信頼性や、「面白さ」が人に依存してしまう点について考慮が必要ではないか、といった意見が出た。
2件目は、Wikipediaの珍妙で面白い記事を集めた"珍項目"に着目し、その編集者や候補記事について分析を行った研究であった。分析結果を踏まえて、珍妙で面白い記事候補の自動抽出と、大規模言語モデルを使った登録判断の補助に取り組んでいる。珍項目の編集には幅広い知識が必要であるため,現在、珍項目の登録記事数や編集活動は停滞気味らしいが、筆者らは提案手法がコミュニティ活性化にも貢献すればと期待を述べていた。質疑では、ChatGPT等でそうした情報は発見できてしまうのではという質問が出たが、まだ現状ではそのような記事を発見できておらず、本研究のような取り組みが必要であると回答していた。
3件目のショート発表は、欠陥のあるユーザインターフェースを持つWebサイトと、欠陥のないWebサイトを用意し、使いにくさがユーザーのWebサイト選択に与える影響を調査した研究であった。BADUIの9つの典型例を参考に各サイトに異なるUI欠陥を実装し、被験者300人にWebサイトの中から選択をさせている。ロジスティック回帰分析の結果、欠陥のあるサイトと欠陥のないサイトとの間に選択されやすさの差は見られなかったと報告している。質疑では、実験条件と調べたい内容にズレがあるのではというコメントがあった。筆者もその点は了解しており、今後の改善が期待される。
4件目は、初学者がが学術論文を読む際の理解を助けるために、専門用語の解説と関連画像を提供する新しい閲覧支援インターフェースを開発した研究であった。論文中の専門用語にリンクを埋め込み、そのリンクをクリックすることで対応する解説文と画像が提示されるインタフェースを提案している。なお、提示情報は生成AIを利用している。質疑では、Web検索を利用した場合との比較をすると良いのではないか、対象を絞り込んだ方が効果的ではないか、といったコメントがあった。
2件目のロング発表では、Wikipediaの記事を編集する編集者情報を用いたエンティティの類似度計算手法およびエンティティ推薦に関する発表がなされた。たとえば、各映画の記事について、その記事を編集した編集者情報に基づく協調フィルタリングにより映画間の類似度を推定することで、商用システムのような評価データがなくとも、映画の推薦が可能となる。質疑では編集には内容の追加や削除など種類があり、それにより編集者間の類似度計算方法が異なるのではという指摘がなされ、発表者からは編集の種類や回数を考慮することを検討しているという回答があった。また、Wikipediaの概要文の取得方法に関する確認や評価方法に関する確認があった。
3件目のロング発表では、IBSと呼ばれるレビュワーのレーティングに基づいた店舗評価手法について、賄賂操作と呼ばれる攻撃手法に対する脆弱性の検証に関する発表がなされた。中華料理店過程を用いてレビュー数に偏りがある模擬市場を作成し、賄賂操作により評点がどのように影響がうけるのかを分析している。質疑では、正解なる真の評価値をどのように求めたのか、賄賂操作が現実においてどの程度実際に適用可能なのかなどのといった質問がなされた。
4件目のショート発表では、ソーシャルメディアにおける意見の分断化のモデル化に関する発表がなされた。これまでの研究における意見変化を明示的に扱ったモデルとは異なり、意見表明を行うことによるペナルティを考慮したモデルによりネットワーク上での意見の分断を説明可能なモデルの提案がなされた。質疑では、国により文化が異なる考えられ、そのような文化差をモデルのパラメータに組み込むことは可能か、現実世界では二極化した集団がある一方でそのような集団に無関心な集団もあり、そのようなモデル化が可能か、といいった質問がなされた。
セッション4: 社会課題解決
座長:杉原 太郎(東京工業大学)1件目の発表者の接続トラブルのため、1件目と2件目の発表を入れ替えて行った。2件ともにショート発表である。
1件目の発表は、統計情報を用いて都道府県のリサイクル率に影響を与える因子についての考察に関する内容であった。政府統計の総合窓口サイトであるe-Statから各県のリサイクル率や物価指数や人口などの統計データを収集し、決定木とランダムフォレストを用いることで各都道府県のリサイクル取組に対するクラスラベルを分類するモデルを作成し、リサイクル率に影響を 与える要因について考察を行っている。質疑では、今回利用した統計データに関する質問や、「各都道府県のリサイクルに対する取り組みがリサイクル率に影響を及ぼしている可能性もあるため、統計データだけではリサイクル率向上の要因は分からないのではないか。」「自治体のリサイクルへの取り組みが行き過ぎると不法投棄が増加するなど、負の要因もあるのでは。」など活発な質疑が行われた。
2件目の発表は、公衆衛生監視の1つとして、感染症の流行状況や多様な病気症状の発症状況を観測・分析することを最終目的としている研究の一部として、SNSで発信されている情報から病気の発生に関する情報を収集することを目的としている。具体的には、SNS上で病気症状に関するキーワードを含む投稿から、SVMやPubMedBERTなどのモデルを用いて、本当に病気症状がある人が投稿しているものを抽出し、モデルの有効性について検討を行っている。実験では「頭痛」「腹痛」「めまい」「嘔吐感」など11種類のキーワードに関してモデルの比較を行った。その結果、5つの素性を組み合わせたSVM、ロジスティック回帰、多層パー セプトロンモデルとPubMedBERTモデルの性能を比較した結果、PubMedBERTモデルが11病気症状のうち9 症状で最も優れた分類性能を持つことを示した。また、11病気症状のうち、「めまい」や「嘔吐感」の判定が難しいとの報告もあった。質疑では、学習のために投稿に対して正例、負例のラベル付けをそれぞれ1,000件行ったことに対して、ラベル付けを行う際に正例にするか負例にするか悩ましい場合の判断の根拠に関する質問や、研究の最終的な目標と現在行っている実験との間にズレがあるのではないかという指摘があるなど、活発な質疑が行われた。
セッション5: テキスト処理
副座長:北山 大輔(工学院大学)セッション5では2件のロング発表と2件のショート発表が行われた.
1件目はロング発表で,レシピ検索のための味特徴ベクトルの作成とその評価というタイトルの発表で,人の主観に近い味の表現を目的として調味料を使って味特徴ベクトルを作るというものであった.調味料ベクトルの作成は人手で行い,量を加味した線形和でレシピの味特徴ベクトルを作成した.また,レシピの味特徴ベクトルの評価には一対比較法を用いた.質疑では,「少量で影響が大きいような調味料とかはどう扱うべきか」という質問に対し,「少々とかの表現に対しても,現在は除去しているが,何らかの重みを与えることを考える」と回答があった.他にも「食感とかも味を構成する要素に思えるが,どこまでを味としてとらえるのか」という質問に対し「食材の特性を考慮しなくても調味料だけである程度表現できると考えていた.今後は食材や調理法も考慮したい.」旨の回答がなされた.また,「すべての指標を自力で作成しているけど,従来研究の知見で使えるところは使っていった方がいいのでは」というコメントがなされた.
2件目もロング発表で,映画推薦におけるトーンを考慮した説明の個人化というタイトルの発表であった.これは,レビューを説明文とみなしたもので,その文のトーンによるユーザの受容性に対する影響を分析したものである.トーンを任意に変更するために,大規模言語モデルを用いている.速報的な意味で,論文には載せていないユーザ評価の結果についても発表がなされた.質疑では,「AIで変換された各トーンの結果の受容性の結果と,各被験者のAIに対する受け入れ態度を照らし合わせて,一貫性のある回答をされているのか」という質問があり,「トーン変換をAIがやっていることを示していない実験なので,一貫性はない.AIによる変換がネガティブと感じている人でも判断することができていないので倫理的な面でも注意が必要と考えている」旨の回答がなされた.他にも「レビュー文の長さによっても受容性自体が変わるようにトーン以外の変数が入ってしまっているのではないか」という質問があり,「現在考慮できていないが,検討したい」旨の回答がった.また,「ユーザ評価の結果について,生のデータを見せて議論しているが,統計的な指標を示して議論したほうが良い」というコメントがあった.
3件目はショート発表で,ホットペッパービューティーデータからの不満情報抽出と解消スタイリストのレコメンドというタイトルの発表であった.BERTを用いて,極性判定を行い,ネガティブを不満情報とし,専門用語(セットメニュー)でフィルタすることで,技術的な不満であると判断する手法が報告された.質疑では,「炭酸泉洗浄とかは美容院の設備の可能性もあるが,メニュー名でのフィルタがスタイリストの技術に関する不満となるという定義の妥当性を検討したほうが良い」や「スタイリストの推薦としては,客が欲していることとのマッチングとかも必要だと思うので,ポジティブな部分も使ってみたらどうか」「スタイリスト側の情報に出てくる技術用語を使うとかも検討してみたらいい」といった今後の発展に関するコメントがなされた.
4件目もショート発表で,転移学習を利用した多クラス分類タスクに基づく適切な商品説明文の抽出というタイトルの発表であった.公式の商品説明をソースドメイン,一般ユーザによる説明文をターゲットとした転移学習をBERTによるクラス分類で行ったものである.質疑では,「クラス分類の数やターゲットドメインである一般ユーザによる商品説明文の収集元などを論文中で明確に書いた方がよい」という論文中の記載についてのコメントがなされた.また,「カテゴリを詳細化するとかしてもうまく行くのかなど確かめていくとよい」といった今後の展開に関するコメントがなされた.
運営委員会
実行統括担当: プログラム担当: 現地担当: Web担当:柴田 祐樹(東京都立大学)